「待ってたよ。エルシャコフ」
「私こそ、また、こうして話ができることをどれほど待ち望んでいたことでしょう」
「早速だが、ひとついいかね?」
「どうしましたか? 随分と慌てているご様子ですが」
「ああ。
時間が無いのだよ。
急ぎで悪いが、例のへびの件なのだが。」
「昔、あなた様と議論しましたっけね。懐かしゅうございます」
「あれから進展はあったかね?」
「ひとり考えあぐねておりましたが、heelというのは、文字通り、踵ということと、暗喩で、へびの尻尾ということでございます」
「なるほど、ヘビにとって、尻尾は痛くもかゆくもないからな」
「彼とは、誰かわかったか?」
「異論はございません」
「では、へびは、既に、彼のheelをくだいたか? いや、その前に、彼はへびの頭をくだいたか?! どうなんだ?! 答えろ!」
「それが、わからないのでございます。一体、全体、どうなってしまっているのか」
「・・・」
「・・・アーチャさまは、この件に関しては、何と?」
「いや、だめだ。あいつとは、この話はするな。いいな。わかったな?」
「はい。元々、わたしなんぞが、この類の話をするのは、あなた様以外、いませんで」
「雨が降ったのは、何日目だと思う?」
「はじめの・・・二日目か、三日目か・・・・そのあたりじゃないですか?」
「七日目を過ぎてからだよ。それまで、緑も無かった。全ては、雨が降ってからだ。それからだ。人間は。とにかく、全てのお膳立てが出揃って。最後に人間だ」
「・・・」
「お前は、虹というものを見たことがあるか?」
「いいえ」
「俺もまだ無い」
「虹は人間との契約の証だそうだな」
「そう書いてありますね」
「本当に、そんなものが、存在するのだろうか? この世に」
「それこそ、アーチャ様に聞いてみては?」
「ああ。あいつなら、目を輝かせて未だ目にしたことの無いものでも希望を持って語るにちがいない」
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