アーチャは、西日が落ちていくと共に廊下の灯りをともして歩いていた。
母を失った今、アーチャは、混沌とした深い闇を感じてもいた。
本来ならば、横になって寝てもいたかった。が、そればかりでは、自分の体力ばかりではなく精神も消耗していくだろうということだけは感じていた。それにしも、この虚無感はなんだろう。
アーチャは、ひとつ灯りをともす。心が癒されるのであった。
灯りをともし終わると、アーチャは、月灯りと蝋燭の灯を頼りに、裏山へと足を運んだ。
湧き水で喉を潤す。
生き返った。
兄さんは、まだ起きてこない。
大丈夫だろうか。心配ではあったが、その日、アーチャは、兄を眠らせておいた。
明日には、
いや、あさってには、起きてくるだろう。
きっと、兄さんは、ご自分が思っている以上に、いや、僕が、思っている以上に、
疲れているんだ。
ゆっくり、眠らせてあげよう。
せめて、僕がこの家にいる間だけでも。
つづく
過去作は、こちらに遺します。https://note.com/ofjt27