ある事情を解き明かす為の実験または考察 2

「例えば、夫の無い未亡人がいたとする。その婦人には、一人娘が居た。少女の歌声はまるで、天使のようだった。人々の心を慰めたものだ。あるものは、心の病さえ治ってしまった。そして、少女は、みなに愛され見事に成長していった。ところが、ところがだ。ある日を境に、彼女に向けられる人々の目が嫉妬に変わっていった。

ここで君なら、解ってくれるだろう? 人類最初の殺人を思い出して欲しい。何故、兄は弟を殺したか? ふたりともあの方から、愛を確かに受けていた。けれども、兄は弟に嫉妬したのだ。」

「何を言っているのですか? 僕にはさっぱり、わかりません。もっと、詳しく説明してください。お願いです!」

「こういった類の話に関しては、解らないときは、聞き流すのが、懸命だ。全てには、時があるのでね。

さて、俺は、これから、酒場にでもいくさ。

君は、寺院か畑か?」

「兄さん、待ってください! 僕は兄さんを救いたいんです!」

「やっと、本音が出たな。俺を救うとは。ならば、お願いしてもみたい。もしかしたら、君なら出来るかもしれないのでね。何故なら、俺は、君のその言葉を待ち続けていたのかもしれない。

さて、話の続きを始めるとしよう。

                                つづく

 

 

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