ある事情を解き明かす為の実験または考察6

 「head over heels. まっさかさまに、慌てふためくさ。ヘビにとってheelsとは、どこかね? 踵は無いから、尻尾だろう。『お前は彼のかかとを砕く』と言われても、その彼が、ヘビの頭を砕くのだから、ヘビにとっては、慰めにもなりゃしない。確かに彼には、かかとが有ったし、それは、それで、酷い惨状だった。目を背けたくもなる。問題なのは、ヘビが直接、手を下した訳では無い。ということだ。ごめんよ。また、ヘビの話で。ただ、どうしても、ここから抜け出せないんだ。ここが、とにかくカギなんだよ。

彼は、一体、誰に殺されたのだろう。

そして、彼が、殺されることは、果たして本当に必要だったのだろうか?

初めから、全て、計画されていたことなのだろうか? 全てが、予定調和なのだろうか?

もしも、違っていたら、と考えると俺には、もはや、絶望しか残っていない。違っていないとしても、もはや、絶望が今の俺には、見えるのだ。だからこそ、悲しいのだよ。ここで、想い出して欲しいのだが、少女が石打ちにあった話を。あの母親は、後を追い死んだ。その絶望と悲しみに比べたら、今の俺が抱えるものなんて、陳腐なものさ。

そして、もしも、ヘビと神の密約故に行われたことであるとしたら、なんて、残酷なんだろう。トカゲの尻尾切りにしては、これ以上、凄惨な現場を・・・・。筆舌につくせない。まさか、ここまで、凄惨な現場になろうとは。三時間もの間、闇が全地を覆ったのだ。大切なのは、地球の裏側までも覆ったという点だ。そして、彼が最後にこの地に残した言葉を私は忘れない。あれは、彼の言葉であり、私の言葉でもあるのだ。彼の苦悩に比べたら、露ほども満たない。だからこその箴言19:12の言葉が、私にとっては、せめてもの慰めだったのだ。」

                                つづく

 

過去作は、こちらに遺します。https://note.com/ofjt27